敗北者のブログ

長年生きて来たぢぢぃの独り言

あれ?




あれ?何でだろう。




刈り払われた夏草が

まだ衰えを知らない

強い陽射しに照らされて

むっとする

青臭い草いきれを放っている。



何でだろう、

腰掛けた俺をふわりと包み込み

妙な郷愁を誘い出す。



南風が運んで来る

どこか遠い遠い彼方から

耳を撫でる様に聞こえてくる

子供達の楽し気な笑い声。




あれ?何でだろう。




何処と無く

楽し気に笑う明るい声が

心の何処かから沸き上がる

いつか君がこんな風景の中で

語り出した話し声と重なって

誰もいない隣に

君の影を覚え出す。



あれ?何でだろう。

君の言の葉の

残響が聞こえ来る。



遥か向こうには

音もなく

陸橋を流れ過ぎる列車の

連なりが見えている。



川面は今日も穏やかで

幾つもの

細かな乱反射を散りばめて

俺の景色を苛んでしまってる。



あれ?何でだろう。

君が迷い悩んで、

選んだ言の葉を

戸惑いながら一つ一つ丁寧に

差し出してくれた君の気持ちと

その想いが

鮮明に甦って来る。



手のひらで

そっと包み込み

受け止めたその言の葉は、

温かくとても柔らかで

優しさに溢れていたんだ。



一生懸命に

心を隠そうとする笑顔が

恥ずかしさにほころんで

伏し目がちに

じっと草を見ていた。



明るく心地良い

弾むような君の声が

青臭い草の匂いに包まれて

この蒸し暑い晩秋の風景には

とても似合っていたんだ。



あれ?何でだろう、

この同じ景色の中に

どうして君は

俺の隣にいないのかな?



あれ?何でだろう。

確かあの時に君は、

「ずっと側にいる。」と

言っていたはずなのに。



あれ?何でだろう。

「もう離れない。」と

この刈り払われた

夏草の景色の中で

約束したはずなのに。



あれ?何でだろう。



そうか。



俺は、



この景色の中で、









泣きたかったんだ。

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