一昼夜の情事
黒すぎる藍色が、次第にブルーグレーに侵食されて行く空を二人で眺めていた。 夜明け前と言う名の、時計を見たくない時間帯に、俺の一物は彼女の体内でかろうじて息づいていた。 美し過ぎるパノラマ映像が、朝の始まりではない夜の終わり様と、まだ物足りなさそうな彼女の夜更けの延長が一致していた。 一物を包み込ん... 続きをみる
汚れた栞
汚れてしまった栞を 挟んだページに綴られた 憂鬱と不安 行く先を 見付けなければならない 真っ白なページには ペン先を向けられず 落書きすら出来なかった あいつらはみんな ここに何かを見付けて 思い描くビジョンが あるのだろうか 俺だけが 取り残されたこの椅子で ため息に汚される ページから目を背... 続きをみる
卑怯者
そう、シックな落ち着きのあるダークブラウンのロングドレスが似合いそうな、綺麗な女性だったんだ。 でも、もしかしたら、 やっぱり、彼女も普通?ではなかったのかも知れない。 別に俺に取って普通かどうかなんて、そんな事はどうでも良かったんだ。 だって俺は、今まで付き合って来た女性の中には、そんな普通?で... 続きをみる
潰えた思い。
こうなるべきだと、ずっと以前から考えていた。 そう、どう見ても俺には似つかわしくない相手だったから。 「愛人」と言うよりも、世間的には寧ろ親娘のように見えていたんだと思う。 なので、街中を歩いている時に手を繋いでいる事が妙に不自然に感じていたんだ。 時には、俺の腕を抱くように両腕で包み込んで体をく... 続きをみる
健康診断
実は、今月の7日から明日22日までの16日間、会社を休んでました。 お盆休みにワクチン注射休暇に健康診断と持病の定期通院を連続でくっ付けたらば、なんと16日間もの夏休みが成立しちゃったんですね。 でも、災害が起きる様な嫌な雨続きに加えてこのコロナ禍の中で病院通い。 しかも、病院内でクラスターが発生... 続きをみる
なげぇ~よ。
自分以外の男の性欲がどんな感じで、どんだけ強いのか、どれだけ女を求めているのかは分からないんだけど、 事、俺に関しての性欲の強さ?ってのは、強さって意味では決して強くないんだと思うんだ。 俺の場合は多分、今までに付き合って来た女性の性欲が強過ぎたんだと思うんだよね。 てか、何が普通?一般的?と言わ... 続きをみる
斬文 4
貴女のため息が いつしか銀色の雲になり、 この澄んだ夜空の あの綺麗な月を滲ませる。 うつ向いて前髪に隠された瞳が、 膝の上で絡めた二人の指先を見てる。 その横顔に月明かりが 翳り出すのが辛かった。 さっきまで、 あんなに綺麗だった下弦の月を 隠せるほどの重いため息。 鈍色のため息。 ベた凪ぎの海... 続きをみる
斬文(危) 3
ベッドで膝を交えて見詰め合っていた。 彼女の視線には、 何の迷いも躊躇いも感じられなかった。 純粋に、真っ直ぐに俺の眼を見詰めて、 迷いのない願いを訴えていた。 「こんな歳になってから、 こんな女にされちゃうなんて、 思ってもみなかったよ。」 見るからに痛々しく赤紫色に腫れ上がった土手が、俺自身の... 続きをみる
斬文 2
こんな男になりたかった訳ではない。 さりとて、大きな岐路に立たされて迷った覚えもない。 選ぶして選んだ道を辿って歩いて来たら、こんな男に成り下がってしまっていた。 何処でどんな選択を大きく間違った訳でもなく、幾つもの小さな岐路をほんの少しずつ歪めてしまっただけなのに、今となっては、こんなにも惨めで... 続きをみる
斬文 1
知らなかった。 分かっていなかった。 そして、少し驚いていた。 私の知らない、 私が、 貴方の中にいた。 どんな風に私は変わるんだろう。 そうじゃない。 どんな自分が、 現れるて来るんだろうか。 どんな自分に、 なってしまうのだろうか。 貴方の色に染まりたい私。 この距離にいる貴方が、 愛おしくて... 続きをみる
そんな理由で、
掛ける言葉を失った、 風を孕んだ髪が舞い上がり チラ見した横顔。 強がる事も出来きなくなって 表情を失った彼女が 大丈夫な分けないのを 俺は良く知ってる。 だからと言って、 選び切れずに呑み込んだ 幾つかの言葉の候補を 手探りで探しても 喉の奥 胃が痛み出す程の 苦しさにさいなまれ たった一言 「... 続きをみる
雷鳴
部屋の窓から落雷を眺めていた。 時々、テレビのニュース画像で観る稲妻とは違って、目の前に広がる実際のパノラマ映像は、一瞬の、しかも何処に落ちるのか予測の着かない唐突な自然現象でしかなかった。 遥か遠くに見えている稲妻は、正に対岸の火事の様で、全くの他人事であって、今の自分には関係のない別世界の出来... 続きをみる
断った。
「ありがとう。でも、ごめん。」 応え方としては、最低最悪でなんの捻りもなければ、気遣いもない。 全くもって、自分の気持ちを素直に晒け出してしまっている無味無臭の無感動な応え方だった。 これでは、相手に対して興味がないのを表現してしまっただけではなく、求められている返事としての感情すら動かされていな... 続きをみる