プロポーズ
くしゃくしゃに歪んだ唇。
はみ出した口紅が
口の周りを汚してるし、
むやみに指で擦ったから、
長い睫毛が
目蓋に貼り付いちゃってるし、
鼻水まで垂らして、
髪の毛がくっついてるじゃん。
なんだよ、
お前って、こうやって間近で見ると
すっげぇ~ブスだよな。
ごめん、
無茶苦茶に可愛いって言ってたのは、
俺の勘違いだった、
取り消すわ。
ひっでぇ~っ顔してるぜ、
その泣き顔。
わっかんねぇ~よ。
普通この場面では、
嬉しさ溢れる笑顔で、
「はい。」
じゃねぇ~のかよ。
お前、
まさか指環だけ貰って断る積もりかよ。
さっさと指に嵌めて
グゥに握ってるけどさ。
それ、
思いきっ切り無理したんだからな。
高かったんだからな。
断るんだったら上げやしないぞ。
なんなんだよ、
今日に限って
そんな気合いの入った
お洒落なんかして来てさ。
いつもより化粧も濃くしてるよな、
今日のお前。
だから、余計に
ぐちゃぐちゃで
汚ったねぇ~んだよ。
おい、なんだよ、
寄って来るなよ。
そんなツラした奴なんかとは
キスなんかしねぇ~ぞ。
その顔で迫って来るなよ。
それはもう
お前の物だから、
返せなんて言わないから、
お前はもう
俺のものだから、
放しはしないから、
今はとりあえず
キスは止めて置こうか。
もうちょっと
落ち着いてからにしよっか。