敗北者のブログ

長年生きて来たぢぢぃの独り言

書いてみた 2

朝起きたら雪なんか積もってんの。

昨日はあんなに晴れてたのに。





「好きで好きで堪らないんです。」


突然の身に覚えのない告白に、その言葉の意味が理解できなかった。


今、彼女の言っている「好き」と言う言葉が余りにも唐突過ぎて、その単語が何を指しているのか、どんな物を堪らなく好きになってしまったのかが俺には思い当たらなかった。


そう言えば、確か数日前に一緒に行った居酒屋でイカ飯を食べながらにこにこしながら美味しいを連発していた事を思い出した。


いやいや、更に考えてみたら、たかがポテトサラダに対しても、嬉しそうに凄く美味しいと言っていたはずだ。


そう、あの時の彼女を思い返してみたら、あの居酒屋で頼んだメニューの殆んどを楽しそうに、美味しそうに食べていた様な記憶がある。

ん?そうすると、彼女は居酒屋が好きと言っているのだろうか。


もう一度、あの店に連れて行けと、わざわざ仕事終わりに呼び出してまで、改まって、しかも面と向かって言わなければならないような案件なのだろうか。

いいや絶対にそれはない事だと即座に理解はできた。


何故なら、社内ではぶっちぎりでダントツの美貌とスタイル、ファッションセンスを誇っている彼女ほどのビジュアルがあれば、安っぽい居酒屋なんかではなく、

自社他社を問わず、世間のイケメンと呼ばれているシュッとしたエリートさん達がどこぞの高層ビルの綺麗な夜景の見える高級レストランで豪華なディナーに誘われる事など日常茶飯事なはずである。

そんな彼女が清潔感の欠けた身嗜みにも気を使っていない、くたびれ果てた俺としょぼくれたリーマンの溜まり場の居酒屋に湿気込む算段などするはずはないのだ。






あの時は、帰宅途中に歩いていたら、突然に後ろから声を掛けられて、お腹が空いちゃったと言う話題からの流れで、たまたま駅前の居酒屋に入っただけの、言わば偶然と成り行きのノリからの食事だったけれど、

後々で考えてみたら、この彼女とは仕事上での接点は少なくて、会社でのデスクの位置が近いと言うだけの他部署に所属している高嶺の花のOLさんに過ぎなかったのだ。

確かに、社内では近くの席に位置しているので毎日毎日顔は合わせて挨拶は交わしているものの、特にそれ以上の身のある会話を交わした覚えもなければ、親しみを感じるような関係ではなかったはずだったんだ。


それなのに、

特に女性慣れしている分けでもなく、彼女に対して下心があった分けでもなかったはずのこの俺が、何故か通勤途中の帰り道で彼女と交わした「お腹が空きましたね。」の合意だけで、一緒に居酒屋で夕食を伴にしたなんて自分でも信じられなかったんだ。



もう一度、あの店に行きたい。と言っているのだとしたならば、「好きで好きで堪らない。」と言う出だしの言葉としては、何か主たる目的語が足らな過ぎる事にやっと気が付いた。


「えっと、それは、もしかして俺にもう一度あの居酒屋に連れて行って欲しいと言っているのかな?」


これがこの俺に対しての告白などと言う勘違いをして、上ずった態度を取って変な恥を掻く事を避けるための安全策だったが、恥ずかしそうにしながら目の前に立ち、上目遣いではあるが真剣なその眼差しは、逃げようもなく明らかに俺に向けられていた。


「貴方が好きです。」


真っ直ぐに俺と視線を合わせ、改めて俺と対峙する彼女。

この彼女があの居酒屋であんなに楽しそうに食事をしていた、あの笑顔の意味がなんとなく理解できてしまった。


「そうなんだ。」


我ながら間抜けで、的外れな応えをしてしまったと思った。


自らを弁護させて頂けるのであらば。

世間様で言われるところの、生え抜きゴリゴリのイケメンエリートさん達が、ありとあらゆる方角から大量破壊兵器や泥まみれの姑息なゲリラ戦法などを駆使して攻略しようとしても、難攻不落で鉄壁な要塞とでも言うべき彼女が、よもやまさか戦意など全くない、田んぼの中を這いつくばって草むしりをしていそうな土着民族的な存在のこの俺に対して、何をどう間違えも決して言ってはいけない言葉だった。


貧しくみすぼらしい土着農民だったとしても、なにも社内の高級官僚に対して卑屈になったり後ろめたさを感じる必要性は全くなく、自分のやるべき仕事を自分なりにきっちりとこなしている以上は己を誇示はしないけれど、どこぞに逃げ隠れする必要もなはずなんだ。


ポリシー?アイデンティティー?在るべき姿で当たり前を実行しながら生きて来た。

と言う空元気が虚しくも言葉には表せはしなかったんだ。


「もしかして、何かの罰ゲームかなんかなのかな?

誰かと駆けをしてるとかなの?」



決して卑屈な気持ちで返した積もりではなかった。

ごく自然に頭の中に浮かんで来た言葉を躊躇いなく口にしただけだった。


「なんでそんな風に受け取るんですか。

酷い。

私をどんな女だと思ってるんですか?」



明らかに少しキレ気味な口調で切り返して来た彼女はツカツカと俺ににじみ寄って来るのだった。


そのまま俺が両手を出して彼女を包み込んでしまえば、ごく自然に抱き合えてしまう様なそんな距離感にまで近付いていた。




JRを越える跨線橋を渡った駅外れの路地裏。左側には廃タイヤで造られた恐竜やブランコがある公園が見えている。




男とはゲスな生き物である。

それまでは、いくら綺麗な女性であっても、どんな魅力を溢れさせている女性だったとしても、手の届かない高嶺の花に対しては不埒な妄想などはい抱いては来なかったはずなのに、いざ、射程距離の範囲内に足を踏入れて来てしまった獲物に対する嗅覚のエゲツなさは、この見目麗しき彼女に対しても例外ではなかった。


手に入るかも知れない。と思った瞬間にあらゆる方向からの抜き差しならぬチェック事項が脳内を所狭しと駆け巡ってしまうのだ。


髪の色艶や肌の質感、唇の厚みや形。

耳の向きや瞼の一重二重。

顔は好みか、スタイルはどうか。

おっぱいの大きさは当たり前で、ウエストのクビレ具合や足首の締まり。

脹ら脛の曲線はどうなのか。

それら外観のチェックは、あくまでもさりげなく、相手に気付かれないように慎重に丁寧に、あらゆる想像を膨らませながら推理を張り巡らせてしまった。




ゲスな欲目を抜きにしても、絶品の一言に尽きる女性だった。






完。

なぜ書いた?

ストーリーや構成とか脚本とか考えないのかね?

オチはどうした?エロ要素もないんかい。



ったくもぅ。

×

非ログインユーザーとして返信する