後悔の始まり。
それから、どれだけの時間が過ぎたのだろうか。
スマホの画面に明かるくなって、通話終了の絵柄が表示され、やがて真っ暗な闇が訪れた。
ぼんやりとした部屋の灯りの中に、時計の音だけが静かに単調に降り注いでいる。
脳裏には、目の前で目を擦っている彼女の姿が、手を伸ばせば触れられるように浮かんでしまっている。
結局は、そのスカートは買えたのかな?
俯いている彼女の頭に手を添えて、ポツリと呟いたら、背後から暗闇に突き落とされる様な哀しみが襲い掛かって来た。
強がっても、隠し切れていなかった彼女の声色が鮮明に甦ってしまう。
声しか伝える事が出来ないちっぽけなスマホは、心を掻き毟るだけの余計な感情しかもたらさない、ただの電話機だ。
おそらくは、このまま折り返しても彼女はもう出る事などはしないだろう。
メールもLINEも消し去り、番号だけは躊躇ってしまった二人の過ちが、幾度となく繰り返している奈落の後悔。