敗北者のブログ

長年生きて来たぢぢぃの独り言

墓参り


駅前の花屋さんで
君の好きだった花を
思いつく限り寄せ集めたら
ごっそりとした花束になったんだ。


街はずれの港町
レンガ倉庫の先を右に折れれば
急な坂道に
君の面影が迎えてくれる


道端の石に腰かけて一休み
幼いころ
君が見ていた港を見下ろせば
潮風に何故か懐かしさを
語り掛けられ


潮風に揺れる花束に
「ごめんね。」と呟いた。




もう少しだから。
頂上の逞しい松の陰から
あの笑顔で手招きをしている
君が見えているようで
履き慣れない革靴に
目を落とした。


一度くらいは
この坂道の途中で
二人並んで眺めたかった
止まって見える小さな
貨物船の景色


窓を開ければ
ビル風が吹き込み
街の雑踏がこびりつく
六畳の寝室で
遠い目をしながら
語ってくれた
この景色


いつかきっと一緒にと
遠すぎた約束


急な坂道
君に背中を押されながら
老いてしまった言い訳を
花束に向かって
独り言




やっと辿り着いた
コスモス揺れる頂上に
君の眠る墓石が
いらっしゃい。
と微笑み掛けてくれた。



刻まれた君の名を
そっと撫でながら目を瞑る


言い訳は見透かされて
泣き言は聞く耳を持たず
願い事は意味を持たない。
ましや
謝罪なんかしたら
怒ってむくれてしまう。


手に取るように浮かんでくる
君のポジティブに
一人で苦笑い。



思い出は二人だけの宝物
あの頃のように
ただ名前を呼びあって
この再会に
君の好きだった花束を
ごっそりと添えた。


たった
線香の燃え尽きるまでの
わずかな時間だけ
手を合わせ
笑顔しか思い出せない
君の面影を追った





大げさに手を振って
「いつまでも見守っているよ。」
背中に降り注ぐ
暖かいエールを感じながら
君の居ない現実までの坂道を
ゆっくりと下りてきた。

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