うじうじ
誤った解釈を解いて上げなければ、されたままになってしまう、その文字が示すの通りの誤解。
別に、嫌いになった分けじゃないんだ。
いいや、寧ろ、そのままでいればもっと果てしなく好きになってしまって、辛くて身動きが取れなくなるまでに惚れてしまいそうな予感すらするくらいに好きだったんだ。
だけど、それが決して良い事じゃないのは、始まった時点で分かっていた事。
不倫。
恐る恐る始めた付き合いは、次第に毒性を増して、いつしか感覚に部分麻痺が起きている事にさえ気付かなくなっていたよね。
手を繋いで歩く。
最初の頃には、あれ程までに人目を気にして街中では繋がなかったのに、
いつしか、会った途端に自然と指を絡み合わせて歩いてしまってた。
そんな些細な事柄を沢山蓄積しながら過ごして来たんだ。
最初の頃に抱いていた嫌悪感が徐々に麻痺している事に無頓着になってたよね。
求め合う心に従って自然体で二人の世界の中に浸っていては見えなくなってしまうモノがあるんだ。
この瞬間にも、疑う気持ちも持たずに何時もの日常を過ごしながら、当たり前に帰って来る俺を待っている人がいる事を忘れてしまってた。
そっちも疎かにしてはならなかったんだ。
だけど、それを俺は表に出してはいけないんだよね。
覚られてしまえば、その一瞬でこの溢れ出る自然な笑顔が失なわれてしまう。
その不自然に作り出した時間を精一杯に大切に過ごし、そこにかき集めた思いを集中させて色濃く過ごす。
それを楽しみにして、一生懸命に俺のいない日々を過ごしていてくれた。
長過ぎたんだよね。
不自然な繋がりが自然に寛げる様になって、お互いがお互いに定着してしまった。
定期的な不安のないデート日程が馴れ合いを生んで、遠慮なく晒け出し切った性欲で結ばれてしまっていたんだ。
大胆に身体を投げ出して、過激な行為を求める事でその魅力を引き上げていた。
その繋がりに甘んじて優位に立っていたよね。
それは確かに、非日常的で刺激的な魅力を持っていたけど、逆に残された傷跡に大きな罪悪感を感じてしまって辛かったんだ。
それは、いつまでも続けてはいられなかったし、続けてはいけない事なんだよ。
本当は、ただの話し相手として、良き理解者としての友達関係で終わらせていれば良かったんだよね。
出来るだけの事はして上げたかったから、出来る限りの事はしたんだ。
それだけしか分けて上げられないんだよね、俺は。
それ以上は付き合えないんだよね。
だって、それは、
浮気以外の何物でもなかったから。
どんな魅力を武器にされても、
どんなに激しく求められても、
それ以上のモノは分けては上げられないんだ。
だって、不倫だったんだから。