敗北者のブログ

長年生きて来たぢぢぃの独り言

胡蝶蘭

何故、

こんなにも苦しいのか?

ただ寝顔を

見ているだけなのに。


何故、こんなにも

狂おしいのか?

安らかな寝息が

聞こえているだけで。


どうして、

これ程までも

愛されてしまったのか?


どうして、

こんな事が出来るほど

夢中になれるのだろう。


いったいこの俺の何処に

そんな価値が

あるのだろうか?


何を見出だし

何に縋って

ここまでするのだろう?


何がお前を

そこまで駆り立てて

こんな決心を

させているのか?



いったい、

俺の何処に

そんな存在価値が

見えているのか?


身を投げ出し

振る舞いを抑せず

成すがままに

全てを受け入れようとする。


確かに、

愛おしく、愛苦しく思える。

咲き誇る胡蝶蘭の如く

可憐で繊細な美しさを纏い

手に触れる時でさえ

大切に、より大切に

扱いたいと願う。


頬に添えた掌でさえ

指先の動きに神経を注ぎ

口付けをも躊躇う程に

大事に大事に

愛でているのに。


愛おしく、

咲き誇る姿をいつまでも

側で見詰めていたいのに。



それとは裏腹に、

大切だからこそ

壊れやすい美しさだからこそ、

いっそ、

滅茶苦茶に

破壊したくなるんだ。


触れてはいけない儚さが

破壊欲を掻き立てて、

ある一線を越えた瞬間から

俺は、

自制を失い、

赴くがままに

お前を壊したくなるんだ。


大切に思っていた、

その分、

いや、それ以上に、

その倍以上に

ぶっ壊したくなる。


滅茶滅茶に、

咲き誇るその花を

むしり取りたくなる。

花弁の一枚一枚を

引き千切り、

握り潰したくなるんだ。

その茎を無惨に手折り

叩き、踏みにじりたく

なるんだ。


可憐な花としての姿を

跡形もなく残虐に

ぶち壊して、

生ゴミになり果てるまで

傷め付ける。


拒んでくれたら良いのに、

嫌がってくれれば良いのに、

どうして俺の与える全ての

仕打ちを受け止めて、

なぜそんな素敵な

笑顔になれるんだ



花は実を結んでこその

可憐さを誇る

種子を残すがための

美しさの筈なのに


虫を誘引し受粉すべき

美しき花弁を

傷付け蝕み傷め付ける

見事な曲線を描く

柔らかな膨らみを

叩き刺し潰し貫く

毟り引き延ばし焼く


それなのにどうして

それが

「ありがとう」

「嬉しい」と

笑顔になれるのか


積み重ねる程に

遺される新しい傷跡

変形し変色して厚みを

増す花弁は

収まる場所からは

醜くもはみ出している。


歪められた曲線美は

窪みや痣やケロイドを

散りばめ汚れた丸い丘と

化してしまっている。


ついさっきまで、

脂汗を流し、

声が枯れるまで叫んで

咲き乱れていた

美しい胡蝶蘭は

今はどんな夢を追って

いるのやら。


安らかな寝息が

俺の耳に柔らかく響く

ぐちゃぐちゃに崩れた

メイクの汚れすら

ものともしない美しい顔立ちは

涙と汗の跡をも飾りの様に

纏っている。


満足を果たした寝顔は

狂おしい程に

俺に問いかけている。


お前の欲望は

絶対に愛などとは

呼ばせないと。

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