敗北者のブログ

長年生きて来たぢぢぃの独り言

そろそろかな



出逢う人は選ぶ事は出来ないけど、出逢った人とどう係わるのかは自分の行動責任の範疇なんだよね。

つまり、私が貴方と出逢った事は、偶然や運命とか必然とかなんだか分からないんだけど、

それから先を繋ぎ止めていたのは私なんだし、貴方から何かを得ようと継続を願ったのも私の判断だったよね。

だから、目を背けながらも罪悪感は常に何処かに塊として持ち歩いていたんだよ。



不倫は不倫でも、私達の不倫は世間で言われている普通の不倫とは相当に異質なモノだと感じてたんだ。

これで良いわけはなかったんだよね。

うん、そろそろだとは感じていたんだ。




話を切り出した場所は、その話しの矛先にはぴったりと当てはまる様な、人影がなく、物淋しげな夕暮れ時の春の浜辺だった。

俺はなるべく理路整然と自分達の立場を、無秩序に吹き付ける潮風に翻弄されながら彼女の作り笑いに向けて話していた。


ここ一年の間に俺達二人の関係は、すっかりと様変わりをしていて、それ以前までに結んでいた自由奔放な間柄を保っては居られなくなってしまって、すっかり彼女と過ごせる時間は無くなってしまってたのだった。

その言い訳じみた俺の切り口を遮る事なく、一生懸命の作り笑顔が必死に冷静さを保とうとしているのが痛いほど伝わって来る。


たいして茜色には染まらない春の夕暮れ時の浜辺は、潮風が意外な程に冷たくて、無理に作っていた笑顔を保っていられなくなった彼女は、無表情で夕陽を睨んでいた。


そう、

出会った時の彼女は、確かこんな雰囲気の表情をしていたんだと、ふと脳裏を過った。

今でこそ、美顔エステや肌の手入れが功を奏してスベスベの肌には綺麗に化粧がのって都会的な風貌に化けてしまっているけれど、その目鼻立ちはあの頃の彼女の面影を残していて、俺の不安を大きく煽るのだった。


今の彼女の生き甲斐って何だろうか?

これからをどんな風に生きて行きたいのか?

俺の視点から見えていた彼女は、俺の目の前いた彼女だけで、俺の彼女なだけだった。

それは、俺の求めている筈の彼女の姿ではなく、彼女のなりたい姿でもなかった筈なのに、それを探そうともせずに、ただ快楽的な付き合いだけに埋もれて来てしまった様に思えてならない。



確かに、出逢いは意図する事のない偶然や運命のいたずらだったりもするが、その出逢いを生かすのか殺すのか、そこから先の選択肢は自身の判断に委ねらてしまう。




うん、そろそろだとは感じていたんだ。



その返事は、

受け入れてくれると言う意味なのか、

それとも、

彼女自身が自分に向けて呟いただけの独り言だったのかは俺には分からなかった。

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