敗北者のブログ

長年生きて来たぢぢぃの独り言

薔薇の眠り




静かで穏やかな時間が、

ゆっくりと流れている。



規則正しい

寝息を肩先に感じながら

彼女の旋毛に唇を添える。



フレグランスの残り香が

仄かに香り

愛おしさが込み上げてくる。



艶やかな黒髪に

指を梳いて

複雑に絡み合った

解れ髪をほどく。



柔らかな感触で

すりすると滑らかに

指を擦り抜け

清らかな流れを整えて

清流の様な美しさを

取り戻す。






今、どれ程の安らぎが

彼女の眠りの中に

訪れているのだろうか。



推し測る物指しを持てない

深夜の閑けさの中に

寝息の音色が

染み込んでいた。




片足が絡み合い

覆い被さった半身の重みと

熱く火照った土手を

感じられるこの距離でさえ

無責任にも

彼女の安息が量れずにいる。




ついさっきまで

咲き誇った

深紅の薔薇の様に

なってしまった花弁を

押し着けては

恍惚とも苦悩とも付かぬ表情を

俺に見せ付けていたのに

今では、

こんなにも

柔和な寝顔を見せている。






マゾヒスト。






なぜ、そんなにも

苦痛の闇で頂けるのか。



なぜ、それ程までに

その痛みが耽美だと

言うのだろうか。



どうして

傷付けられる事で

性的な快楽が

得られるのだろうか。







見た目の感覚として

重厚な深みのある濃い赤色が

ビロードの様な質感を纏い

より立体的な重みのある存在感を

誇示するかの様な深紅の薔薇。



その花は、

手折られる事を頑なに拒むかの如く

鋭く尖った幾つもの刺のある

細い茎の頂きに凛として咲き誇り

その色香を漂わせている。



眼を引くその紅の美しさは

まるで人血の様な魅惑的な情熱を

奮い起たせ

俺を狂乱の境地へと誘った。







そこに撃ち付ける鞭の撓りは

確実に花弁を

捉えなければならない



振り下ろす力は

決してその花びらを

裂いてはならない。



守る手が除けるまで

庇う脚が自らの意思で

再び開くまで

待たなけれならない。



躰の芯底で

その痛みを充分に味わう姿を

愛でなくてはならない。



満遍なく

切り裂けない様に

慎重に丹念に

そして確実に振り下ろす。



その脚が開かれる限り

その意思が望む限り

何度でも何度でも

花弁を苛み続けるんだ。



幾つもの波に仰け反り

何度も頂きを味わい

その苦痛の底を舐め尽くして

深い激痛の暗闇の果てに

辿り着く頃に、







白き双筒の脚が結する丘の元

見事な深紅の薔薇の華が結している。



俺の手に因って開花した

一輪の薔薇は

花弁を小刻みに震わせながら

その深い赤を纏い

俺の訪れを待っていた。

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