家内は異常者?
そもそも、こんな俺と結婚してしまうなんて事が尋常ではないんだな。
先ずは俺自身の説明をしましょうか。
見た目は全くもって冴えない醜男である。
100人の中で98位が99位レベルのひどい見た目と雰囲気を持つ個性派。
中学校時代にカバに良く似た醜男の同級生に仲良く肩を組まれて、「こいつよりもマシだぜ」と堂々とみんなの前で言われた時にはマジで死にたくなったんだ。
えぇ~っ、100位のお前よりも俺の顔は酷いのかぁ~い。と、
どん底に突き落とされた気分だったんだ。
あっ、これはあくまでも見た目の話しで御座いますので、性格や心はこの限りでは御座いませんので、誤解の無き様にお願いしますね。
の様な外観をした俺の家系と言えば、本家。
いわゆる先祖代々の家系を継いでいる家。
とは言え、絶対に由緒正しい家系なんかではありませんよ、誤解の無いようにお願いします。
単純に本家と言うだけの家柄。
お墓なんかは、石がボロボロに欠け落ちてしまって墓石なのか、ただの石くれなのかも分からない様な物が幾つもあったりしてる様な、古さだけが取り柄の家系です。
しかし素性は一切分からない、多分、没落した家系なんだろうと思います。
まっ、出所の分からない家柄なんですが、取り敢えず本家を名乗ってるんですね。
なので叔父さんや叔母さんが沢山いる。
なので、盆や暮れ正月には親戚がやって来たりしてしまうんですよ。
そんな本家の長男として生まれ着いた運命と言うか定めと言うか、
つまり、この家を出る分けにはいかなかったんです。
要するに両親の居るこの家に嫁を迎えて同居するって言うのが俺に課せられた使命だったんです。
そんな、過酷な条件下の家に今どきの若いお嬢さんが、親と同居しなければならない様な男となんて付き合おうとする分けがない。
況してや結婚なんてのは絶望的。
だったはずなのに、
まっ、家の事はさて置いて。
こんな醜男と付き合うなんて女性は、
多少なりとも居るんですよね。
蓼食う虫も好き好き。
割れ鍋に綴じ蓋。
青天の霹靂。
まあ、世の中には変わり者が居るってのは確かです。
友人の彼女の知り合い。
特に紹介をされた分けでもなく、なんとなく、何度か同じメンバー5~6人でカラオケに行ったり、食事をしたりの遊び友達だったんだ。
それがいつの間にか隣に居る事が多くなり、いつも何かを話し掛けて来ていたんだ。
常に明るくて楽しそうに話をしてる彼女。
色んなしょうもない話しばっかりしている彼女だったんだけど、
その話しの内容には人の悪口や陰口とかは一切なくて、せいぜい「あの人には、そんな所があるよね。」止まりで悪口にまでは進展して行かなかったんだ。
単純に性格が良い。
明るくて楽しい。
俺も男ですから、
隣に居る機会が多くて、無防備にニコニコと話し掛けてくる彼女に
手を出さないって分けには行かなくて、
そんな関係を結びましてね。
何度かそんな事をしていると、
今日は避妊しなくても大丈夫な日ってのがあって。
生で中へとしてしまって、、、。
で、
「ねぇ、もしも妊娠しちゃったらどうしようか。」
の問に、
その場のノリで、
「その時は結婚しちゃえば良いよ。」と、
軽く冗談半分で口にしてしまった俺の言葉に、
めっちゃ嬉しそうな笑顔を見せて、
「えっ、本当に」
そうだった。
彼女は人を余り疑わない女だった。
況してや、付き合っている彼氏が中出しのセックスをした後に言った言葉が冗談とは決して思わない筈だった。
それにしても、もの凄く嬉しそうに喜んで、その後のテンションの高さったら、とても「冗談だよ。」なんて言えやしなかったし、俺としては、どうせ結婚なんて諦めるだろうと思ってたので、その頃には敢えてその言葉を撤回する様な事はしなかったんだ。
俺も、特に彼女に対して不満を持っていなかったから。
と言うよりも、
彼女と結婚したら、俺はきっと幸せにして貰えるんだろうなぁ、と、
なんの根拠もない想像をしてたんだ。
俺の家の事情を知れば、そんな彼女もきっと諦めるのだろうと思っていたんだ。
もしも、
俺と彼女が結婚するとなれば、何よりもの難関があったのです。
実は、彼女の名前が母親と同じ名前なんですよ。
つまり、結婚して俺の名字を名乗ると、
母親と嫁が同姓同名になってしまう。
しかも、いずれは同居家族になる分けで。
こんな醜男と
本家の長男と
両親と同居で
姑と同姓同名になってまで
こんな俺と結婚するメリットは彼女には何一つも無った筈。
はずだったんだ。
やっぱり家内は、何処か変わっている変質者なんだろうな。
何か人間の機能として持っていなければならない、危機管理的な感情の一ヵ所が欠けてるんだろうね。
危機回避能力の欠如?
そんな家内と長年連れ添って居られるって俺も、社会不適合者なんだろうね。