惜別
別れた当初は、迷ってる。
って感情が一番強かった。
本当にこのまま惜別してしまってもいいんだろうか?
別れる時期は今のタイミングで間違っていないか?
もう一度考え直して、何か他の案が無いのかを考えるべきじゃないのか。
次に、したのは後悔かな?
出会ってしまって、好きになって恋をした。
その過程の一つ一つを振り返ると、
その時々に下していた判断が本当に正しかったのか?
あの時に違った決断を下していれば、もしかしたら、今のこんな後悔の仕方をしなくても済んでたのではないのか?
自分達の心の赴くままに恋愛芝居を演じ上げ、互いに求め受け入れている事に酔ってはいなかったか?
幸せになって欲しいなんて、微塵も願う気にはなれなかった。
もちろん、不幸になれ。なんて思いもしていなかったが、
彼女が俺以外の男と付き合う事を考えたら、気が変になりそうな位に心が掻き乱されて冷静ではいられなかった。
言葉、仕草、温もり、肌の質感がまだリアルに目の前に当たり前にあって、いつもの彼女となにも変わらない姿をしている。
別れたんだと言う、紙に書かれた文字面を眺めているだけで何一つ現実として受け止めてはいなかった。
普通に日常を過ごしていると、ちょっとした出来事に出くわしたりして、あっ、今度会った時に彼女に話して上げよう。
なんて、今までの当たり前に溜め込んでいたエピソードのはけ口を失っている事に気付いて我に返った。
あれもこれも、日常で起こるいくつもの楽しい話しや悔しい話し、他愛ないエピソードまでもが記憶に蓄積され取捨選択されては消え失せて行く。
そうだ!これは絶対に伝えて上げたい。
と、思った出来事に出会った瞬間にザックリと胸に刺さっている刃の鋭さに気が付いて、本当に別れてしまったんだと、自らの心が削られて薄くなっている事を感じ始めるんだ。
あれ?俺って、もしかしたら悲しいのかな?
ひょっとして、泣きたいのかな?
もしかして、泣くべきなんじゃないのかな?
心の半分が、感情の半分が、俺らしさの全部が、彼女に持って行かれてしまってる。
今更になって、
当たり前に、居るべき時には常にそこに居てくれて、俺のなにもかもを共有し共感てくれていた俺のもう半分の心が失くなってる。
なんだろう?
悲しくもなければ、淋しくもない。
辛くもなければ、痛くもない。
何に対しても気持ちが動かなくて、涙も出なければ可笑しくもない。
泣く事もできなければ、もちろん笑える分けもない。
なんだ、そうだったのか。
彼女は俺の全てだったんだ。
俺は俺の全てを棄ててしまったんだ。
そう言えば、そんなクリスマスも過ごしてた事があったようななかったような。
好きになるとなり振り構わず夢中になってのめり込んでしまう、0か1、onかoffの二択しかないバイナリーで救い様のないバカなんですわ。
そんな目で見ないで。
ほっといて下さい。