敗北者のブログ

長年生きて来たぢぢぃの独り言

負のスパイラル


もうこれ以上

続けてはいけないんだと思う。


俺は、お前と別れようと思う。

共に破滅と言う名の

冷たい沼の中で、

二人が二人だけに

なってしまうから。


お前だけの俺ではないから。


俺一人でお前を抱え切れないから。


お前の望みには、

応えられないから。


応えられない俺を庇う様な笑顔を、

みてるのが辛いから。


応えられない辛さに、

俺が耐えられないから。


応えたいと願う俺は嘘吐きだから。


嘘吐きの俺を許すお前が

憐れだから。


憐れを隠すお前が悲しいから。


悲しむお前を俺が感じてしまうから。


だから望みを口にしない

お前なんだと、分かっているから。


口にしなくても

痛い程に伝わって来るから。


笑顔も行動も仕草も態度も

言葉も暮らし方も話し方も

対応も選び方も

全部に。

お前の全てに滲み出てる、

「望み。」

俺はそれを叶えない。

お前だけではないから。

二人だけにはなれないから。   

お前だけの俺にはなれないから。



俺には、家庭があるから。


だから、


    ごめんね。

IWハーパー


IWハーパーのボトルが

殆ど減らない夜に

浅く座ったソファーで俯いて

深いため息が一つこぼれ落ちた


短いプリーツスカートから

スラリと伸びた綺麗な素足が

ため息を軽やかに踏み潰して

鼻唄と共に離れて行く。



ロックの酒がこんなに苦いなんて

いったい何年振りだろうか

アートテイタムの連打が

痛いほど心に突き刺さる


いったい、

どんな風に切り出したら

良いんだろう。

どうすれば、

傷付けずに済むんだろう。

どんな言葉を

選んだら、この笑顔を

崩さずに終われるのだろうか。


高い酒に

酔えないジャズが、

俺の居場所を削り落として

つい、うっかりと

明日の約束を交わしてしまう。


琥珀色の決意が飲み干せずに、

唇に触れるのは

水っぽいバーボンと

クソ熱い約束のキス


終電の時間が迫っているのに

切り出す言葉も選べずに

グラスの滴を眺めてる

孕みたい。


全裸ながら凛とした佇まいで

目の前に立つ彼女は、

その決意を露に示す眼差しを

真っ直ぐに俺に向けて言った。


「貴方の赤ちゃんが欲しい」

と、


両手をお腹に当て子宮からの

叫びに従う様な聲が

俺の心に突き刺さった。


禁断の決意が女の性と業で

結実して剥き出しになる。


俺は戸惑いや驚きよりも、

抱いてはいけない歓びを、

下腹部に向けていた。


それは棄てられる身の覚悟。


俺の証をその子宮に宿し、

愛情の矛先を我が子に向ける。


認知は要らないと言い、

俺との縁も絶つと言い放つ。


目に見えぬ血飛沫が、

両手に抑えられた下腹部から

噴き出して俺の胸ぐらを

真っ赤に染め上げる。


俺はその膨らんで行く腹を

愛でる事が赦されない。


それが贖罪だと言うのだろうか。


それが彼女の

このグズに対する

復讐なのだろうか。


復讐の結末はいったい

何処に終息するのだろう。


母と子は復讐の為に生きるのか。


この人生の中の一瞬に、

宿す命を生きる糧にすると

言うのだろうか。


それが本当の彼女の望み

なのだろうか。


答えに目を背ける程

俺は腐ってはいない筈。


もう数千を超す程に思いを遂げた

愛着のあるいとおしい体は、

確かな実体を持って

手の届く目の前にある事実。


そこにはまだ空っぽの腹が

息ずいているだけで、

その中では、

まだ何も始まってはいない。


始めてはならない。


それは今までも、

これからも、

何も変わらない。


禁断関係の基本である。


この均衡を保てなければ、

この世界の全てが

失われるだけである。